意識をプログラミングするには #2
現在公開中のポッドキャスト「意識をプログラミングするには」をテキストでご紹介します。
出演:石井敦(クーガーCEO) / 本村淳(クーガー キャラクターAIデザイナー)
今回は全3エピソードの第2回目です。
石井:さて、前回は意識とは何か、認識と予測をループ処理していることについて話しました。今回は、意識のループ処理についてより詳しく本村さんにお話を伺いたいと思います。
本村:ループ処理には、大きなループ処理と、その中の小さなループ処理があります。意識はセンサーからの入力を得て、それが何なのかを自分の記憶の中から探し始めます。それとは別に、予測と認識を小ループで検索していると思われます。
外部の環境を把握するために、自分の記憶や書籍で得た知識など、体験の中から類似するものを探る作業には時間を要します。脳の記憶は膨大で、全部を探りきることはできません。探り終えるまでセンサー入力をストップしていると危険なので、センサーは一定間隔で入力を続けなければなりません。
石井:入力は遠慮なくどんどんやってきますからね。
本村:記憶の中で類似を探ることをパターンマッチングと呼ぶとしましょう。このパターンマッチングを1フレームで行っています。1フレームというのはゲーム作りでいうと1秒60フレームくらいですが、それぞれのセンサー入力に対して1フレームずつパターンマッチングを行っています。しかし、フレームを跨いで処理しない場合、ゲームプログラミングでいうと出力されずに画面が固まってしまいます。つまり、全部ロードし終わるまで描画しない状態です。一方、フレームを跨ぎながら処理すると、ローディングバーは少しずつ進みます。この二重構造が大きなループと小さなループです。
これは人間の処理能力の限界故かもしれませんが、パターンマッチングを無限に全記憶に対して行うことが時間的にできず、次の入力が始まるとその前のパターンマッチングの処理の途中結果がアウトプットされます。それが繰り返され、アウトプットされるから認識できる、これが「考える」ということだと思います。
石井:はじめにパターンマッチングでおおむね当たりをつけて、より厳密にマッチングする記憶をループ検索する。はじめから一致率の高さを狙うというよりは、柔軟に全体像を素早く掴んで、時間があればより研ぎ澄ましていくような動きですね。
本村:そうですね。これは、「直観」と「時間をかけて考えること」、この二つが同じ処理なのではないか、という仮説です。センサー入力された情報を基に認識と予測を時間の限り行うのが1フレーム「直観」で、フレームを跨ぎ長い時間をかけて行うのが「意識的に考える」ということだと思います。「直観」と「意識」はループの長さに違いはあれど、内部処理は同じなのではないかと考えています。
石井:一巡しているか、何巡もしているかの違いですね。一巡での判断と、何巡もした判断のどちらが適切なのかは状況によりますよね。例えばスポーツの世界でサッカーなどは一瞬で判断するしかない状況がよくあると思います。
細かい判断が頻繁に入り、毎度新たに判断しなければいけないものと、過去にした同じような判断を参照できるものとの差がありますね。
本村:プログラミングの場合は、判断もルールに沿って作る必要があります。そこで重要なのがエモーション、情感です。目的設定、達成したかどうかの判断、どういう行動をとるのか、おおむね情感ベースで決定しているのではないかと思います。
石井:生命維持のリスクをカバーするために感情が生まれるのではないでしょうか。空腹になったら不快感を覚えるような。
本村:まさに「不快を潰す」というのが行動の主な目的ではないでしょうか。快と不快がありますが、不快は快を求めて行動します。記憶には感情が紐づいているので、予測と認識でいうと、これから何が起こるか、この行動を起こしたらどのような状態になるのかを予測して、予測が不快である場合は、どうにかそれを避けようとする、そのために目標設定がなされます。
石井:おなかが空いた、何か恐怖を覚えた、などの過去の感情の記憶があるから避けられる。つまり記憶が感情を伴っていることで判断が素早くなり、危機から脱する可能性が高くなる、というわけですね。
本村:感情の記憶のデータが増えれば増えるほど、精度は上がっていきますね。
石井:安全で快適な部屋にいる人がいて、客観的には快の状態であっても、当人は退屈すぎて不快である場合、それを避ける動きになりますか?
本村:まさに暇つぶしこそがすべての創造の元だと考えています。よく風呂の中でアイデアを思い付いたという例を聞きますが、慣れた状態、暇な状態、それを潰すために何か面白いことを考える、それが創造につながります。
石井:なるほど!裕福な貴族が暇を持て余し、新しいものを生み出すバロック時代のようなことが起こるわけですね。暇から文化は生まれ、人類は進化すると。
本村:絵画の例もそうですね。写真技術が生まれ、記録や伝達のための実用性がなくなったけれど、今は表現のアートとして進化している。暇になったからですね。
石井:確かに人間は、暇を埋めて、また忙しくなる生物ですね。ゲームは暇を潰す代表的なものですが、ゲーム産業はすごく忙しくて、徹夜までして暇を潰すものを作り出しています。暇があり、忙しくなって、それで進化する、という、そういうことですね。
本村:それは非常にあると思います。では次にループの仕組みについて考えていきたいと思います。(第3回に続く)

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