意識をプログラミングするには #1

現在公開中のポッドキャスト「意識をプログラミングするには」をテキストでご紹介します。
出演:石井敦(クーガーCEO) / 本村淳(クーガー キャラクターAIデザイナー)
今回は全3エピソードの第1回目です。

石井:生物の意識の仕組みはどうなっているのか、バーチャルヒューマンを作る際に意識をどのようにプログラミングするのかを、本村さんと話していきたいと思います。

本村:こんにちは。今回のテーマは「意識をプログラミングする」ですが、科学的根拠はあまりありませんので、妄想を聞くような形で捉えていただければと思います。

石井:我々クーガーの基本的ジャンルのひとつでもあるゲーム業界において、意識とはこう動くのではないかという仮説や手法などをお話ししていきたいと思います。

本村:ジェフ・ホーキンスさん著「考える脳コンピューター」で述べられている考え方が我々の着想になっています。『意識』という言葉は多様に使われますが、次の3つではないでしょうか。

・意識がある、意識がない
・意識する、意識しない
・意識的に、無意識的に

今回お話する意識は、1の意識=覚醒という場合です。意識がある時、起きている時に人間の脳の処理はどうなっているのかをいろいろ妄想した内容です。

石井:意識は何のためにあるのでしょうか。

本村:「考える脳コンピューター」の中には、単細胞生物は遺伝子に設定されたルールに従ってのみ行動し、行動を変えるには子孫を作り世代を変えていくか、遺伝子の変異を待つしかなく、この場合環境が変わった時に全滅する危険があります。対して脳がある生物は、ひとつの生の中でリアルタイムに環境を認識し、行動を変えることができる。そうすることで個体の生存率は飛躍的に向上します。特に高度な脳を持つと言われている人間には、環境認識を行う新皮質があり、生存率が高いとされています。

石井:後から書き換えられるソフトウェアのようなものが人間には備わっているという感じですね。人間は他の生物と異なり、生後すぐに自立できずにひたすらインプットする期間が長いことを以前は非効率だと感じていましたが、逆に、新しい知識や概念をできるだけ取り入れて、完全に適用させることができる、というのはすさまじい能力といえますね。

本村:適者生存という言葉がありますが、生物学の中では、リアルタイムに環境を認識して行動を変えることができるというのは、最強の武器で、その武器を最も多く持っている人間が生物の中で一番発展しているのもこれによるからだと思います。その強い武器がどういう仕組みになっているかというお話をしたいと思います。

石井:ループ処理ですね。

本村:はい。人間の脳はコンピューターに例えられることがありますが、意識がある、意識がないという例でいうと、意識があるときはコンピューターの電源が付いている状態です。熟睡していたり気絶している時は電源がオフの状態です。コンピューターも電源が入っている時は何らかのループ処理をしていますが、人間も意識があるときはずっとループ処理をしています。
五感を含む身体の感覚機能、脳下垂体からの伝達、外部・内部を含んだ環境の情報を常に取得し、全身に巡っている神経の管を通じて脳に集約しています。脳が情報をすべて認識し、それが何であるのかを予測や判断をして行動が生まれます。行動は内部だけで留まるのか、外部へ出る行動なのか、いずれであってもアウトプットされます。情報として送られてきたものが何か分かった、終わった、行動が伴われなくてもこれはアウトプットです。

石井:ひとつの計算、処理が終わった、これがアウトプットですね。

本村:行動を伴うアウトプットの場合は特に、その行動により環境が変化します。その変化の情報をまた新たな入力として取り入れてアウトプットする、そのループが意識だと考えています。

石井:お酒で酩酊していたり、怪我で意識が朦朧としている時は、そのループが遅くなったり、処理判断や順番が狂ったり、いつもよりうまく動作しなくなりますね。気絶しているときはループ処理自体が止まっている。身体は生命維持機能が活動していても、脳を中心とした意識は停止している。
意識があるときの処理について、考えていきたいと思います。馴れている動作は自覚して処理をしなくてもアウトプットされますよね、トイレに行く、車を運転するなど。

本村:無自覚に行動できるのは、目標設定をしているからだと思います。机の上のコップを取ろうとした際に、手が机の下にある。そのまま手を挙げたら手が机に当たってしまうのに、無自覚に手は机を避けて机の上にあるコップを持ち上げることができます。肘の角度をどうしよう、などは意識していません。車の運転はそういった細かい動作が積み重なり複雑になっているだけで、小さなタスクをこなしながら、設定した目的地にたどり着けます。学習済みの馴れたことである場合、目標を決めた後はほぼ無自覚に行動することができます。

石井:そうですね。学習済みの馴れた行動である場合はそうです。一方、車の運転で行ったことのない目的地であったり、または目的地は毎日行っている場所でも初めてバイクを運転して向かうなどの場合は、道の取捨選択や運転の手順などをフル回転に意識しながら行うことになりますね。

本村:注意するという意識が覚醒している、「自覚」の方の意識ですね。

石井:はい。では次に認識、予測のループ処理についてより詳しく考えていきたいと思います。(第2回に続く)

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