AIとリテールメディアが変える未来の店舗体験──NY「NRF 2025」最前線レポート

世界最大級の小売業界向けカンファレンス「NRF Retail's Big Show 2025」が、2025年1月12日から14日の3日間、ニューヨークで開催されました。このカンファレンスは、世界中の小売業界関係者が集まり、最新のテクノロジーやトレンド、革新的なソリューションについて議論する場として知られています。
クーガーからはCEOの石井と筆者鹿毛が参加しました。本レポートでは、参加レポートに加え、AIやリテールメディアの最新動向、そしてMacy’sやWalmartの現地視察を通じて得た知見をお伝えします。
カンファレンス公式サイト:https://nrfbigshow.nrf.com/attend/event-recap

今年のNRF 2025には、Amazon、Walmart、Target、IKEA、H&Mなどの大手小売企業が集まり、日本からはファミリーマートも参加。最新の業界動向や技術革新をテーマに、講演や展示が行われました。
会場の熱気に触れる中で、最先端のテクノロジー展示、業界の第一線で活躍する専門家の講演、そして新たな出会いを生むネットワーキングの場として、世界中からの注目度の高さを肌で感じました。

展示ブースを回ったり、業界関係者と話したりする中で、弊社の人型AIアシスタント「レイチェル」にも多くの方が興味を持ってくださり、非常に有意義な時間となりました。

今年のNRFでは、AIを活用した店舗オペレーションの最適化、ライブコマース、サステナビリティ、パーパス経営など、多岐に渡るキーワードが出ましたが、特にリテールメディアの注目度が断トツでした。
リテールメディアとは、ECサイトやアプリ、店舗内のデジタルサイネージなどを広告媒体として活用し、メーカーやブランドの広告を配信する仕組みで、小売業者は自社が保有する購買・行動データを活用して、精度の高いターゲティング広告を提供できます。
広告主であるメーカーやブランドにとって効果的なマーケティング手法として注目を集めており、今後ますますの発展が期待されています。

リテールメディア市場については、講演でも大きく注目されていました。
ディスプレイ広告と検索広告の成長を比較している部分では、ディスプレイ広告が急成長することが予想されています。(2022年時点では、検索広告($4.17B)がディスプレイ広告($2.80B)を大きく上回っていますが、2026年にはディスプレイ広告($8.57B)が急成長し、検索広告($9.13B)との差が縮小することが予測されています。※Amazon以外のリテールメディア市場)

Amazon以外のリテールメディア市場におけるディスプレイ広告の成長
リテールメディアネットワークは、近年急速に成長しており、特にアメリカでは、Walmartなどの大手小売業者がこの分野に積極的に参入しています。この成長により、小売業者は新たな収益源を確保し、広告主は購買データを活用した効果的なターゲティングが可能となりました。今後、リテールメディアネットワークは、AI技術のさらなる活用や広告フォーマットの多様化、パフォーマンス測定の標準化などを通じて、主要なマーケティングチャネルとしての地位を強化していくと予想されます。

今回のNRFでも、AIを活用したリテールメディアの進化が特に話題になっていました。購買データを元により精度の高いターゲティング広告を配信したり、リアルタイムで最適化する仕組みが進化していました。広告の効果測定もAIが支援し、ますます効率的な運用が可能になっています。リテールメディアの成長は、AIと共にさらに加速しそうです。

展示された最新電子棚札(ESL)のラインナップ。多様な用途に対応するシリーズが紹介されている。

AIの進化により、小売業では需要予測の精度向上や店舗オペレーションの最適化、リテールメディアの広告最適化などが加速。顧客体験のパーソナライズも進み、効率化と売上向上の両立が実現しつつあります。今後もAIの進化とともに、小売業界でのさらなる活用が期待されます。

さて、NRF 2025の議論が実際の店舗でどう活かされているのか、ニューヨーク現地での店舗状況を検証するため、Macy’sやWalmart、Best Buy、ホールフーズ、B&Hの店舗5店を視察しました。
Macy’sではデジタルとリアルの融合、WalmartではAIとデータ活用による業務効率化に注目。最新技術の実践例を現場で確認する貴重な機会となりました。

ニューヨーク最大の百貨店Macy’s(メイシーズ)のヘラルドスクエア店に行ってきました。
全体を通して、店舗のデジタル化が進み、オンラインとオフラインの境界がより曖昧になっている印象でした。まさに、伝統ある百貨店の枠を超え、新しい小売の形を模索していると感じました。

どの店舗も液晶画面での広告があり、印象深かった中の一つは、靴屋さんにある鏡にもディスプレイ広告が搭載されていることでした。
Macy’s, Inc. のCEO Tony Spring氏は、成長戦略について講演で語りました。Macy’sは60,000人の顧客データを分析し、品揃え・サービス・ビジュアル体験・マーケティング・サプライチェーンの最適化に取り組んでいます。Spring氏は、百貨店の本質は「選択肢のキュレーション」であり、AIとデータ活用を通じてさらなる進化を目指す姿勢を示しました。150店舗を閉店し、350店舗に投資していく計画。


Walmartの店舗を訪れると、効率的な売場運営とテクノロジーの活用が随所に見られました。まず目についたのは、売り場のディスプレイ広告です。動きのある動画で目を惹き、QRコードも多く取り入れられていたのが印象的です。
Walmart U.S.のCEO John Furner氏は講演で「Walmartは小売業のAI革新を担うNVIDIAの技術を活用し、需要予測の精度向上やデジタルツインを用いた店舗・物流の最適化を推進していく」と語り、共に登壇したNVIDIAのVP Martin氏は「AIは仕事を奪うのではなく、活用することで、より生産的になれる」と強調しました。両社は協力しながら、小売業におけるAIの可能性を広げ、新たな顧客体験を創り出すということを語っていました。

その中で目についたのは、ディスプレイの上にあるカメラです。正確には分かりませんが、視線の動きや滞在時間を計測することで、広告の効果を測定している可能性があります。

また、店舗内でのセキュリティカメラでは、顔認証機能も取り入れていたりと、AIを活用した高度な監視・分析システムを導入していることが分かりました。万引行動の検知だけでなく、顧客行動の分析にも使われているのかもしれません。
店内のあらゆる場所でこのようなセキュリティカメラが使われており、セキュリティとプライバシーの間の問題が非常に大きな課題になっているアメリカらしい取り組みだと思います。


マンハッタンにあるBest Buyを視察してきました。店内ではディスプレイ広告が所々にあり、ここで注目したい点は電子値札でした。

電子値札の利点は、通常の紙の値札とは異なり、リアルタイムに価格の変更やプロモーションの表示が可能なことです。この導入により、Best Buyは価格表示の自動化や在庫管理の効率化を図り、ダイナミックプライシング戦略を強化しています。

マンハッタン、ブライアントパーク近くにあるホールフーズを視察してきました。親会社であるAmazonの技術力を活用し、ホールフーズは、リテールメディアとAI分野で様々な取り組みを行っていると聞きます。
こちらの店舗では特に目立ったディスプレイ広告はなく、お店に入ってすぐ目に入るところにディスプレイ広告が一台あるのみでした。


マンハッタンにある世界最大級のカメラ・映像機器専門店にも視察をしてきました。老舗のカメラ・映像関係の店ということもあり、リテールメディアという言葉が注目される最近だけでなく、かなり以前から店内には至る所に動きのある映像でのディスプレイ広告や、電子値札が使われているようです。
リテールメディアで用いられる天井下斜め上目線のディスプレイ広告はレジ前だけでなく、至る所に採用されています。

エスカレーターを上がってすぐ目につく柱には4方向にディスプレイ広告が取り付けられています。
そして、確認できた商品の殆どに電子値札が使用されていて、ダイナミックプライシングが採用されているのだろうと思われます。

今回、ニューヨークでのNRF参加と店舗視察を通じて、今後のリテールメディアとAIの融合はさらに進み、リアル店舗でのパーソナライズが加速していくことが体感できました。店舗運営においても、AIによる需要予測や業務効率化が進み、小売業のあり方自体が大きく変わっていくのではないでしょうか。
それはつまり、小売店舗自体が、人間のように考えて行動するような存在になっていく近い未来を筆者はリアルに想像しました。
世界では今、AIとデータの活用を軸に、すべての産業が新たなステージへと移行しています。この変革が今後どのように進化していくのか、引き続き注目していきたいと思います。

クーガーは自律的で大胆なチャレンジを支援し、それぞれの個性を生かした技術と創造性の追求ができる場を目指しています。
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