【登壇レポート】7,000店舗で稼働するAIはどう作られたか。
効率化を超えて「人の成長」を促すLUDENSの全貌

人間に必要なのは単に業務を効率化するだけのツールでしょうか? クーガーが出した答えは「No」です。クーガーは、人の能力を引き出し、成長を促すパートナーを提供できると信じています。
2025年11月20日に開催されたアーキテクチャConference 2025にて、クーガーCEOの石井敦とチーフアーキテクトの土田悠貴が登壇し、ファミリーマート7,000店舗で実稼働中のバーチャルヒューマンエージェント「レイチェル」の裏側を語りました。ゲーム開発、画像認識、検索エンジン──異なる技術領域をクロスオーバーさせてきたクーガーが、どのようにして現実世界の業務システムとヒューマンインタラクションを融合させているのか。本記事では、その講演内容をもとに、クーガーの技術プラットフォーム「LUDENS(ルーデンス)」の全貌を紐解きます。
世の中にはデータが溢れていますが、ダッシュボードに数字が並ぶだけで、人は最適な行動をとれるわけではありません。CEO石井が講演の冒頭で強調したのは、まさにこの「データと行動の乖離」という課題でした。

クーガーのルーツは、ゲームや知覚AI、そして大規模検索エンジンにあります。石井自身、過去に大規模検索エンジンの開発を指揮していますし、チームメンバーも世界的なテック企業で同様な技術を磨いてきたエンジニアがいます。「ゲーム」と「AI」。一見異なるこの二つのDNAが融合した先に生まれたのが、バーチャルヒューマンエージェント「レイチェル」です。
現在、レイチェルはファミリーマートの7,000店舗、国内全店の半数近くに導入され、店長業務を日々サポートしています。石井は、その導入効果についてこう語りました。「レイチェルを多く使っている店舗は、そうでない店舗よりも店舗運営のポイントがつかめて業績が良いという結果が出ています。言い方を変えると、『店舗運営ゲーム』のような状態を作り上げているのです」

クーガーが目指しているのは、単なる業務の自動化=「楽にさせること」ではありません。「人の成長」です。一般的なLLMや業務ツールはユーザーを楽にしますが、それだけでは個人の理解力や洞察力は育ちません。データを見て、理解し、納得し、行動を変え、習慣化する。このプロセスでは、どうしても個人の能力差が生まれてしまいます。
そこでレイチェルは、まるでゲームのガイド役のように振る舞います。「何を優先すべきか」「なぜやるべきか」を対話の中で伝え、行動に対してはフィードバックやリマインドを行います。

「ユーザーが理解しているか、納得しているか、その上で行動に移しているか、その行動を習慣化できるか、が重要です。それによって、業務をサポートするだけでなく、ユーザーを成長させていくことができます」石井の言葉通り、無機質な数字ではなく、レイチェルを通じたインタラクションが店長自身の「気づき」を促し、その結果、現実の店舗運営というスコアが向上していく。クーガーが実装しているのは、現実世界を舞台にしたゲームに近い構造です。
7,000店舗という大規模な環境で、しかも個々の店舗や店長の特性に合わせたきめ細やかなインタラクションを実現するには、強固な技術基盤が必要です。チーフアーキテクトの土田が解説したのは、レイチェルを動かす人型AIプラットフォーム「LUDENS」のアーキテクチャ設計でした。
LUDENSは、視覚を司る画像認識AI「VisualCortex」、聴覚と言語理解を司る「LanguageCortex」、そしてそれらを統合制御するネイティブアプリ「LudensCore」で構成されています。このシステムの最大の特徴は、ゲーム開発の思想を取り入れた「エンジン層」と「スクリプト層」の分離構造にあります。
「エンジン層をハードウェア、スクリプト層をソフトウェアのように捉えると近いと思います。ゲームに例えるならNintendo SwitchやPlayStationのようなハードウェアがあり、その上で様々なゲームのソフトウェアが動くというような関係性です」

土田の説明にある通り、エンジン層(LudensCore)はUI基盤、通信、3D描画、スクリプト実行環境といった、エージェントの「スキル」を提供します。ここには特定の業務ロジックは含まれません。一方、スクリプト層(InteractiveCode)には、JavaScriptベースで具体的な業務フローや対話ロジックが記述されます。「発注アドバイス」や「お客様への売場案内」といった個別のユースケースは、すべてこのレイヤーで制御されます。

「1つのプロダクトで全てのユースケースをサポートするのは少々難しいところがあり、例えばB2Bの業務支援と、B2Cの接客では、求められるUIも情報の密度も全く異なります」と土田は語ります。これらを一つのプラットフォームで実現しつつ、安定稼働させるために、クーガーはあえてシステムを疎結合に保つ設計を選びました。「エンジン層ではユースケース固有のロジックを含まない」という土田のこだわりは、バーチャルヒューマンエージェントを社会全体へ広く実装していくというクーガーのビジョンの表れでもあります。
「そこにいる感覚」を生み出すためには、応答速度(レイテンシー)と文脈(コンテキスト)の理解が不可欠です。LUDENSでは、エッジとクラウドを適材適所で使い分けるハイブリッドな構成をとっています。
例えば、画像認識を担うVisualCortex。土田によれば、当初想定していたサーバー処理から、現在はエッジ(現場のPC)での処理へとシフトしています。「LudensCoreからVisualCortexに送ることもできるのですが、動画のデータを送ることになるので、レスポンスが著しく遅くなってしまいました」
現在、サイネージなどの用途では、カメラと直結したエッジデバイス内で高速に画像解析を行っています。これにより、例えば「寿司が好き」というレイチェルのキャラクター設定に基づき、VisualCortexが寿司を認識した瞬間に、レイチェルが喜ぶといったリアクションを即座に返すことが可能になります。

対して、対話を担うLanguageCortexでは、意図(インテント)の解釈に重きを置いています。「『見せて』と『見して』は同じですし、『表示して』とか『出して』とか、意図は1つでも言い方は何パターンもありますよね。そうした時に一つひとつを判断して全部サポートするのは、なかなか難しいです」
ユーザーの曖昧な言葉をAIが解析し、挨拶や商品表示といった意図に変換する。もう1つ、クーガーが大切にしているのは、AIの提案を鵜呑みにしない点です。AIが生成した返答候補を、一度InteractiveCode(スクリプト層)が受け取り、キャラクターの性格やその場の文脈というフィルターを通して最終的な出力を決定します。
「このキャラクターならどう喋るか、どういう動きをするか、と言ったことは全てInteractiveCode側で制御しています」土田の言葉が示すように、AIはあくまで要素の一つであり、最終的なユーザー体験(UX)を作り出すのは、クーガーが緻密に設計したインタラクションのアルゴリズムなのです。

今回の登壇で改めて浮き彫りになったのは、クーガーが開発しているのは単なるAIチャットボットではなく、現実世界に介在し、人の行動変容を促すインターフェースである、ということです。
効率化の先にある「人の成長」や「体験の深化」。それを7,000店舗という規模で実稼働できていることは、クーガーの大きな実績となっています。LUDENSというプラットフォームは、これからも多様なユースケースに拡がり、人間とAIの新しい関係性を築いていくはずです。

クーガーは自律的で大胆なチャレンジを支援し、それぞれの個性を生かした技術と創造性の追求ができる場を目指しています。
ぜひ採用ページからエントリーください。カジュアル面談も実施しています!
最新情報をメールで取得
登録
© Couger Inc. All rights reserved.